昨日行われたAKB48のシングル曲センターを決めるじゃんけん大会で、島崎遥香さんが優勝し、初のセンターを獲得した。
ニックネームは「ぱるる」。正統派アイドルのルックスを持つが、一部のファンからは、その不器用な性格ゆえに「ぽんこつ」とも呼ばれている。
私はここ半年くらいの間に彼女のファンになり、グッズを買ったり、総選挙でも票を投じた。
私が彼女のファンであるのは殆どがその愛くるしいビジュアルによる、と思っていた。
でも、確かに彼女は可愛いが、それよりももっと強く私を惹きつける理由があったことに気がついたのである。
昨日の優勝が決まった瞬間というのは、もう正に夢のようだった。
まさか自分の応援するメンバーが、多人数のグループの頂点に、しかも運の要素の強いじゃんけんで頂点になるとは全く予想していなかったのだ。
自分で夢を叶えたわけでもないのに、夢が叶うとはこういうことなのかと悟ったような気分にさえなった。
そうして、興奮によりあまり寝付けない一夜を過ごし、いつもよりも早起きしてテレビをつける。
今日はテレビも朝から昨日のじゃんけん大会のことで盛り上がっていた。
今まではあまり知られていなかったぱるるが、全国放送でクローズアップされる。
しかも一度では無い。一日を通して、芸能コーナーなどで何度も何度もその話題が放送される。
私は最近ひきこもりに近い生活を送っているので、一日中テレビを見ながらそれらの放送に一通り目を通して、この上ない満足感に浸っていた。
でも、突然、なぜか言い様のない感情が心を支配するようになった。
寂しいような、悲しいような、或いは焦っているような。
とにかく不愉快だった。
なぜだろう。
昨日あんな素晴らしいことがあって、今日も一日中その余韻に浸っている。
それなのに、なぜだろう。
久々に感じる苦痛を前にして、私はどうすることもできなかった。
それから、泣いた。
久しぶりに泣いた。
泣きながら、ようやくわかった気がした。
私は、彼女の顔よりも、彼女の性格、その「ぽんこつ」さに惹かれていたのだ。
人と交わることが苦手で外に出ようとせず、だからといって孤独は苦手で家ではテレビやパソコンを友達にしている。
もし外に出て何かをしようとすれば、おどおどしながら失敗ばかりして、自分が人よりも能力の劣っていることを自覚するだけになる。
だから働くことが怖い。
私は今まで、そんな自分の「ぽんこつ」さを、彼女の性格に重ね合わせていたのだ。
無論私と彼女の「ぽんこつ」は性質が異なり、一緒にすることはできないのかもしれない。
でも、自分と同じような子が、身近なアイドルとして頑張っている姿を見て、一種の安心感を得ていたのである。
それが、彼女は一夜にして有名になり、どこか遠くの存在へと変わってしまった気がした。
阿呆らしいと笑われるかもしれない。
とりあえず、今の自分には外に出てみることが必要なのかもしれない。
また、自分と彼女とを必要以上に重ね合わせることからは卒業するべきなのかもしれない。
今回の涙で色々なことを考えさせられた。
ぱるるおめでとう。 あなたの卒業にもおめでとう。
ありがとうございます。 自分は自分。他人は他人。 そのことを忘れずに、今後も彼女を応援したいと思います。