2010-09-25

SFロボットアニメが急速に陳腐化しつつある件について(再論)

 

 俺が前に書いた表題の床屋談義について(http://anond.hatelabo.jp/20100923234530)。

 暇なはてな民の方々からそこそこ意見が寄せられてきたのでここらでみんなの意見を踏まえつつ再論する。人によってはSFという言葉過剰反応したり、「SFロボットアニメ」の定義がわかんねえよとの声があったが、語義を巡る議論に深入りするのは主眼ではない。ここでは差し当たって「巨大なロボットとそれを指揮するキャラクター物語の中心となる近未来アニメという意味として便宜的に使わせて頂くのを許して欲しい。近所のレンタルビデオ屋にある「SFロボ」のコーナーはこれで並んでおり、一般的な認識ともそう離れてないと思う。(これだとたとえば、「鉄腕アトム」や「攻殻機動隊」は近未来だけどOUTとなる、一方で「パトレーバー」はINとなる。)

SFロボットアニメ陳腐化現象について

 で、上記のように定義づけると、「トランスフォーマー」のように「テレビくん」で販促しているようなキッズ向け作品に関しては好調なものはあるものの、従来の大きな柱であった「アニメージュ」で取り上げるようなティーンネイジャー以上をターゲットにしている部類では、陳腐化は間違いない。

 たとえば最も有名なタイトルであるガンダムシリーズは、作品数の減少が顕著だ。90年代には「V」から「∀」まで5つのテレビシリーズ(加えて複数のOVA、映画)がリリースされた。しかし、00年代に入ると、テレビシリーズの新タイトルは「SEED」(続編含む)、「00」の2つだけだ。

 ガンダム以外にも、90年代には「エヴァンゲリオン」「機動戦艦ナデシコ」など今も語り継がれる新タイトルのヒットがあった。今冷静になって振り返るとこれロボット出す必要あんのか、という作品までロボットが登場していた。具体的には、「神無月の巫女」や「エスカフローネ」、「サクラ大戦」(これはアニメというよりメディアミックス作品だが)などだ。00年前後までは「ロボット」は登場人物を引き立たせる定番の構成要素だったと言っていいかもしれない。

 しかし00年代にはいって、男の存在を抹消した萌えアニメの隆盛と入れ違うようにしてSFロボットアニメプレゼンスが消えていった。中でも象徴的な出来事は07年の「グレンラガン」だった。久しぶりにガイナックス制作するSFロボットアニメで、内容的な出来も(個人的には)期待を裏切らないものだったが、その影響力は同時期に放送していた「らき☆すた」の方が完全に上回っていた。「エウレカセブン」や「創聖のアクエリオン」は、事前プロモーションメディアミックスで力をいれていたものの、作品としてはことごとくコケた。この2作品が今でも人々の記憶に残っている理由は、アニメの成功ゆえではなくパチンコで行きを吹き返したおかげだ。

 結局、世紀が変わった当たりからSFロボットアニメは定番タイトルの続編が少なく新タイトルもろくなヒットが出てこなかった、ということになる。

どうしてこうなった

 はてな民からのコメントに、「企業が興味を示さなくなったから」というのがあったが、これは結果と原因を取り違えている。企業側の主導で消費のトレンドを作るのは電気製品などではよくあるが、アニメトレンド消費者が主で企業が従、がこれまでの流れだった。重要なのはなぜ消費者が興味を示さなくなったかだ。

 それは「21世紀の現代に適応できた新しいSFロボットアニメ像を提示できていないから」。繰り返しになるが、やはりこれが一番大きいと私は思う。「ロボが出てくる未来のおはなし」だけではもう飽きた、というわけだ。前回のエントリに対し、別のはてな民も『電脳コイルゼーガペイン見たときに思ったのが「これ、ロボアニメである意味あるか?」だったなぁ』と回顧している。SF的な未来世界の中に「巨大な人型ロボット」の存在は間違いなく時代遅れになりつつある。

 実際、ストーリーはすでに出尽くされ感がある。たとえば、

14歳の少年早瀬浩一は、ある日“事故”により、少女と出会い、巨大人型メカ「ラインバレル」を手に入れた。何も出来ず、正義に憧れているだけだった少年の周りは、彼が圧倒的な力を手に入れたことでめまぐるしく動き始める。新しい仲間と出会い、友人と別れ、守るものを背負い、自らを囲む世界と向き合い、やがて少年は成長してゆく。

 これは2008年に放送された「鉄のラインバレル」のストーリー紹介だが、これにたいして海外掲示板にすら「俺たちは同じようなアニメを幾つもみてきたんだよ!」って放送当初からキレていた人がいた。

 設定や描写も現代では通用しなくなっている。空気のない宇宙でバキュンバキュンする銃撃戦は15年前までならOKだったが、今そんなことやったら恥ずかしくて目も当てられない。ネットでも炎上する。それと、お互いを「○○少尉」とか軍隊風の呼称で呼ぶことも、あのコクピット内の絵面(ごちゃごちゃした巨大なマッサージチェアみたいなところに腰かけて膝の横辺りにある操縦桿を握る)もそう。そもそも2足歩行があれだけ一般的な形式であり続ける工学的な理由は何?陸上を移動するならば足よりも車輪の方が機能的じゃね、と外人でなくてもそうツッコミたくなる。

 もっと根本的に、少なくとも目の肥えた「大きなお友達」にとってはSFの持っていた神通力が衰退したことも大きい。前回のブクマコメントにあったように、SFはかつてテクノロジー未来を提示する役割を果たしていたけど、今やSFにその力はなくなってしまった。小さな通信端末はもちろん、ファーストガンダムアムロがいじくっていた電子書籍端末も今年Ipadが出てきた。20世紀にワクワクしていた未来技術世界は、21世紀の今になって確実にワクワクできなくなっている。深刻なのはそれを21世紀の私たちがワクワクできるような形に上手くリニューアルできていないことだ。「SFロボットアニメがどうこうより科学の発展に大した希望をもたなくなった」という悲観的なコメントもあった。

これからどうなる

 だから結局、オーソドックスSFロボットアニメが受入れられなくなってきたから、今はなんとかして新しいそれに代替するSFのあり方というか表現方法を模索してる、という段階なのだと思う。1つの流れとしては、『プラテネス』みたいな、自分と割と身近な人が宇宙に行って、みたいな話だ。ロボットなんてシロモノをあえて登場させず現実的な想像力で捉えられる範囲で、人間同士の関係を描写する。もう1つの流れは、SFロボットアニメの突飛さをあえて逆手にとり、腐女子的な暴走ノリを表す手段として借用する流れだ。ちょうど「コードギアス」がそれをやって大いに受けたし、近々放送される銀河美少年のやつもおそらくその形だと思う。「ガンダム00」?あれは本来やるべきワクワクするような未来世界を提示できずに単純な現代の延長でお茶を濁した失敗作であり、SFアニメの屈服だ。

記事への反応 -
  • 21世紀の現代に対応できた新しい「未来像」を提示できていないから。 これが最大の問題。 少なくともガジェットに関してはあの頃の未来技術はだいたい実現化してしまった。小さ...

    • SFロボットアニメが急速に陳腐化しつつある件(再論)  俺が前に書いた表題の件について(http://anond.hatelabo.jp/20100923234530)。 暇なはてな民の方々からそこそこ意見が寄せられてき...

    • 「エヴァ」や「エウレカ」方面にシフトしただけでないの。 ロボットがある時代にも大した夢はないだろーね、とみんなが予想をつけちゃっただけで。 SFロボットアニメ自体がどう...

      • 「エヴァ」は何だかんだ言って15年も前のアニメだし、それ以降ろくなヒットが出てきていないのは事実だと思うんだよ。 「エウレカ」も「アクエリオン」もパチンコで話題になったが...

    • おにゃんこだって、十何年もすれば復活するんだから、SF系も、そのうちブームが来るだろ。世代だよ世代。 宇宙船が実用化されてないんだから、まだまだ、価値はあるだろ。単に同一...

    • 実感として、スターウォーズの応用みたいなのよりは『宇宙兄弟』『プラテネス』みたいな、自分と割と身近な人が宇宙に行って…みたいな話の方がウケるんじゃないかなとは思う。 突...

      • そーいや、どうでもいいけど。 「宇宙兄弟」の主人公って超絶エリートだけど、演出の問題として徹底的にごまかしてるよね。 理系博士(おそらく東大クラス、悪くて筑波東工大)かつ...

        • 確かに宇宙飛行士っつても工学的な専門的知識が必要だから、そこら辺の人が行けないという時点で確かに感情移入は難しいなw エウレカみたいなファンタジー入ったSFなら、世界の成...

      •  だから、「プラネテス」も、「コードギアス」も、繋がっているわけよ。結局、メカで表現するオーソドックスなSFアニメができなくなってきたから、結局新しいSFのあり方とい...

        • っていうかさ。 SFっていうものが、ジャンルではなく方法論の一つへと矮小化したんでないの? ロボが出て来る未来のお話、っていうだけではもう飽きたっつーわけで。 主題がガジ...

          • いやいや、SFはとうの昔に方法論の一ジャンルなわけで。 ロボの話だと、機械/コンピューターってのが既に身近なので、それを扱うのも身近な所からの方がウケる。 宇宙ものも衛生や太...

            • 河出文庫から出てる『20世紀SF』シリーズ見ると見事にその流れになってるよ。 個人的には80年代のSFは個性的ではっちゃけた感があって好きだな。あの辺りから人間の内面にフォーカス...

          • 恥ずかしいから思わず指摘しちゃうけど ×ビルディングス・ロマン ○ビルドゥングスロマン(Bildungsroman〔独〕)

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