2007-08-26

努力すれば格差を乗り越えられる、なんて思いつかなかった

格差社会の話で、個人の努力を云々する人がいて、

それは個人に責任押しつける結果にしかならないと思うんだけど、

ただまあ確かに当事者としての貧乏人に何ができるかっていうと、

選挙に行っても明日すぐに楽になるわけでなし、

明るく生きることを考えたり、這いあがろうと努力したりしかなくて、というのはあると思う。

自分の話。

親はブルーカラー労働者で、まあ極貧とまでは行かないけど、生活は苦しかった。

早く商業高校でも出て自分で稼いで、好きなことにお金を使いたかった。うまいものを食いたかった。

だけど僕の高校進学のことで中学先生と三者面談をしたときに、先生が親に「普通科へ行かせてやってくれ」と言いだした。

僕も親も、高卒就職することしか考えてなかったから、それはない、と言う。

でも先生は「こいつは大学に行かせてやって下さい」という。かなりしつこかった。しばらく問答したけど、

最後には「お金は何とかなりますから。何なら私が貸したっていい」とまで言いだす。しかも泣いてた。

今思えばどこまで本気だったのかはまあアレだけど、そう言ったことは事実

結局親に無理させて、大学に行った。国立大で、授業料はほとんど免除だったけど、それでも金はかかるし、バイトもずいぶんやった。

でも、あのとき先生があそこまで食いさがらなかったら、僕は大学になんて行ってなかったと思う。

あの先生が担任で、僕は運がよかった。結局お金は借りずにすんだけど。

いや、苦労話を聞かせたいんじゃなくて。苦労ならもっと大変な思いをした人はいっぱいいるし。

そうじゃなくて、「頑張って勉強して、能力を伸ばす努力をすれば、上の社会階層に上がれるかもしれない」

なんてことは、大学進学を真剣に考えるようになるまでは、まるで思いつきもしなかった、ってこと。

ああでも、お前が無知だっただけ、って言うんだろうなあ。

違うんだよ。社会に本当に階層があって、しかもそれが移動可能だなんてことは、全然リアリティのない話だったんだよ。

テレビドラマに出てくるような上流階級みたいのがこの世にある、ってことは知ってる。だけどもう全然リアリティないんだよ。

大学なんか行ったことのある奴は、親戚中探したっていない。

同級生には大学進学を考えてる奴もいたけど、そいつんちはウチとは違う。

ウチは金もないし、親も歳だし、早く手に職つけて働かなくちゃ。一生懸命働けば少しはマシな暮しだってできるだろう。

だけどもそれは、階層を上ることとは全然違うことだった。

努力なんて、せいぜい「まじめに働く」くらいの意味だった。

格差の固定化って、だからたぶん、努力するための資本がないとかいうことだけじゃなくて、

努力すれば格差を縮めたり、乗り越えたりできるかも、なんて本気で考えることができないような、

そういう環境の中で育つ、ってことでもあるんじゃないかなぁ、と。

貧乏でも実際なんとか大学には行けるけど、能力があろうがなかろうが大学進学なんてまるで想像の埒外、

という貧乏人の子だって結構いるんだよ。

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