その中年の男は母親と暮らしていた。彼は多くの高貴な紳士達と同様に労働を嫌っていた。父親の残した遺産と、母親の僅かな稼ぎと年金によって生活していた。
彼は異世界転生物語が大好きで、寝食を忘れて何日もそれらを読み耽ることがあった。異世界に転生した主人公が敵と対峙する時、主人公がヒロイン達を守る時、彼の心はいっそう高鳴った。そんな調子で読書に耽る習慣を身につけた彼は、世の中にあるありとあらゆる異世界転生物語を読むために、ついに母方の祖母が残した田畑や駐車場、アパートを全て売り払い、父の遺した財産を全て引き出してしまった。母と家を出ていた妹、その夫の制止を振り切り、である。そして、電車で大きな書店に行くと、そこで買えるだけの異世界転生物語を買い漁った。書店にないものもインターネットで買い漁った。既に販売されていないものも古本屋とインターネットで買い漁った。彼の部屋には大量の本、タブレットとパソコンの画面に映し出されたインターネット上の異世界転生物語、それらを印刷した大量の紙……
こうした物語を読んだおかげで、哀れな男は理性を失うこととなった。
なろう系にそこまでカネぶち込めるとかあたまおかしくね? そういうフィクションなんだろうが
ドン・キホーテのパロディかな
まじか、浅学ですまんかった