2022-09-12

全ての血を捧ぐ

夕食後にまったりしていると息子が「今度友達献血行ってくるわ」と話し出した。

何事も経験することはいいことだと伝えると、どうやら何か心配なことがあるようだった。

友達が「全部の血を抜くやつと、透析するやつがあって、どっちがいい?」って聞いてきたんだけど……」と言い、麦茶一口啜ると意を決したかのように「俺、全部抜く方にしようと思う」と並々ならぬ決意を表明してくれた。

「そうか。うん。そうか」と笑いを噛み殺しながら息子の決意を噛み締める父親役を演じると、息子は少し照れて恥ずかしそうな顔で「1時間くらいかかるらしいんだよね」と続けた。

1時間身体中の血を全て抜く……この子ボランティア精神文字通り命がけだと感心した。

思い返せば18年前、ほかの赤ん坊よりも大きく生まれてきた息子がここまで何事もなく育ち、このコロナ禍で血液が不足している今の状況下で命を賭して全ての血を差し出すとは、胸にグッとくるものがあった。

その感情を悟られまいと「まあ、とりあえず」と冷静を装いながら「お前は盛大な勘違いをしているから、とりあえずその手にもってる便利な板で「全血献血」と「成分献血」を検索しろ」と親としての責務を果たした。

ちなみに献血しようと思った理由を問うと「献血ルームってお菓子食べ放題なんでしょ?」とのこと。残念だが、最寄りの施設ではコロナ禍以降やってないから。残念。

明日ドーナツ買ってきてやるよ。好きなだけ食え。我が愛しきアホ息子。

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