小学生の頃、クラスでなにかの催し物をやることになり、ゼリーのお菓子を作ってふるまうことになった。
火を使わずに作れるものだったことと、高学年だったこともあり、児童の自主性にまかせて進められることになった。クラスの女子の提案により、日頃の感謝をこめて、担任の先生の分も本人に内緒で作ることになった。
お菓子作りはスムーズに進んだ。液を型にながしこんで冷蔵庫にしまった後、片付けが終わったので、先生を呼んだ。先生は一通り調理室のチェックをした後、冷蔵庫がある調理準備室に入った。すると、ひと呼吸置いた後に何かを悟った女子数名が、焦って準備室に駆け込んだ。お菓子は先生へのサプライズとして用意していたので、準備している量が多いことに気づかれたらマズイと思ったらしい。
当時私は、もしその事について言われたら、「液が余ったので予備に作りました」と返事すればいいのにと思っていた。焦って不自然な行動を起こすより、現実的な嘘をついてサラッと流す方がバレにくいと思ったからだ。
しかし、それではダメなのだ。ついでに作った予備のお菓子をもらって、心の底から嬉しいと感じる人がいるだろうか。贈り物が何たるのかを、同級生の女子たちは良く理解していた。それに対し私は、多少勉強ができたために、自分が聡明な子供だと勘違いしていた痛い子供だった。