今回の件で政府側及びその賛同者たちが争点として挙げているのはメディア側のモラルであるが、この点はたしかに議論の余地があるのかもしれない。少なくとも素人には判断できない法学的知識が必要になるだろう。
しかしながら、それ以上にわれわれが国民として警戒せねばならないのは政府側が、安倍晋三氏のツイートからもわかるように、その批判の対象を恣意的に選択している点である。
たしかに、メディアはしばしば誤報を発するし、そのモラルが疑われるべき不祥事を起こす。とはいえ、日常の様々な雑務に追われるわれわれ一般国民はマスメディアを介せずに専門的な情報を入手することは困難であり、彼らを頼らざるを得ないのも事実である。それを否定するのであれば極論、与党の機関紙さえあれば十分ということになってしまうだろう。
したがって、今回の件においてメディア側に問われるべき問題があるとしても、われわれが何よりもまず注意すべきはモラルの問題ではなく、政府とメディアの間にある権力勾配についてであり、そこで蠢いている権力者たちの悪意に満ちた謀略である。
恣意的に批判対象を選択した上でメディアを敵視するような風潮を煽り立てようとする政治家たちの意図に与するようなことは絶対にしてはいけない。