ちょうど20年前ぐらいになるだろうか。
地方の大学生だった俺はこれといった夢や目標を持たず、うだつの上がらない日々を過ごしては悶々としていた。
いつも降りる駅のいくつか手前で下車すると、目に入った古臭い食堂で好きなだけ飲み食いする。
これだけのことだが、たまに大当たりなどもあっては、その幸運と一種のギャンブル的な面白さに矜持を感じていたんだ。
そんなことを繰り返していて、あるとき立ち寄ったのは、これまた年期の入った食堂。如何にも地元民御用達と言わんばかりに錆びた看板を気にする様子もなく、店頭に並べられた花はどれも頭を垂れていた。
入ってみると大方普遍的な定食名ばかりが壁に張られおり目新しいものもなく、ただひとつ気になったのは『カレイライス』というメニュー。カレーライスをちょっとハイカラな言い方してるのかな?程度に気にして、注文したのは焼き肉定食。味は普通よりちょっとおいしい程度で、そこまで印象に残らず。ただボリュームはあって、そこは好印象。
完食して会計を済ませようとしたところで常連らしきおっさんが来ると「さかなのやつね」とこなれた感じて注文。すると注文を聞きにきたおばちゃんは「カレイライスね」と承諾。俺はギョッとしたが、おばちゃんは俺に気付くとレジに来たので会計を済ませ、そこで俺は店を出た。