ニュータウンじみた町に住んでいる。31歳独身男の一人暮らし。
仕事終わりに散歩をしている。在宅勤務なので、今日外に出るのは初めてだ。
孤独と老化と仕事への嫌悪感で将来に悲観的な想像しかできない。仕事の環境はおそらく恵まれているのに、この気持ちは何だ。
楽しそうに騒ぎながら下校する小学生のガキどもを見て、つらい思い出ばかり残る学生時代を思い出してしまう。
次第にガキどもにやり場のない怒りがこみ上げてくる。
そんな中、ひとりのガキに目が行った。
そいつは一人で下校していて、ビニール傘の柄の部分を首にかけていた。
開く部分は首から横に飛び出ていて、水木一郎のスカーフのようになっている。
朝から在宅勤務だったので、俺は今日雨が降っていたのか知らない。
こいつ、バカだなぁと思いつつ、不意に泣きそうになっていた。
この街にいる他のガキがどうなろうが知らないが、俺はこいつのために税金を納めようって思えた。
もののけ姫の最後の方で「アシタカは好きだ、でも人間は嫌いだ」という言葉があったと思う。あの言葉はサンが人間に肯定的な意見を持つ第一歩だと思う。
人間から物の怪になりかけてそうな自分の心の絶望が少し和らいだのを感じながら、そんなことを思う。
たぶん今日は酒を飲まない。
ごめん。飲んじゃった
社会の構成員の一人って感覚、大切だと思う。