負のループだった。
終電で帰って、自宅に帰るまでの夜道、俺はフラフラと下を見ながら歩いていた。
仕事で失敗する。そして、寝てしまうと明日が来るから、寝たくならない。
すると睡眠不足になる。
頭が重くて、どうしようもなかった。悲しいことばかりが、嫌な未来ばかりが頭に湧いた。
この無間地獄から、俺は抜け出せる気がしなくて、死んでしまったら楽なんじゃないかと思って、
スマホをつけて、でも画面ではなくて道路を見ながら歩いていた。
そんな時だった。
胸が急にジンジンと熱くなった。
なんだ。これは。
そしてボーっと理由がわかる。
師走の冷たい夜の風は、それなりに着込んだ服を貫通して、俺の乳首をビンビンにしていた。
その時だ。
『つまらないこと考えすぎたな。俺の乳首はこんなにビンビン丸なのに』
という、謎の声が頭に響いた。
なんだよビンビン丸って。
俺の歩調は、少し確かなものになっていた。頭の中の声は響き続ける。
『なんとどうしようもない世の中だろう。乳首ビンビン丸だというのに』
厳つい知らないおっさんが朗らかな顔で、俺にそんなことを語りかけるイメージが頭を駆け巡った。
誰だお前。
俺は生きている。
乳首だって感じている!ビンビン丸だ!乳首ビンビンでこんなに感じているのに、死にたいなんてことがあるものか!
自分で自分に語りかけて、『乳首ビンビン丸』という単語がリフレインして、下らなすぎて笑っていた。
その時、俺はもう俯いていなかった。
明日も生きていこうという気持ちに満ちていた。スマホに『乳首 感じる 理由』と打ち込んでいた!
冬の夜風よ、ありがとう。感じやすい乳首よ、ありがとう。俺は明日も頑張る!
俺を救ってくれた乳首を弄りイクッ!
急にどうした