いや、姪っ子はさっきまで、たしかに「ここ」に存在していたのだ。
姪っ子の皮膚の感触をまだ覚えている。
そこで私は思い出したのだ。
これは作られた夢であったということに。
この派遣型リフレのお姉さんは女性型アンドロイドであり、3万円で私に仮想現実サービスを提供してくれていたのだった。
客の脳内に直接、お望みの仮想現実を提供する夢のようなサービスである。
そうだ、そうだ、そうだった。
私はそれを望んで彼女をオーダーしたのだった。
あまりにも現実感があったため、ここが錦糸町のラブホの一室であるどころか、今までの自分の荒んだ過去を一瞬だがまったく忘れてしまったのだった。
最新技術の凄さに驚きつつ、私はラブホを出て帝鉄「錦糸町」の駅に向かった。
これぐらいなら傘をささずとも直ちに人体に影響はないであろう。
姪ドロイドとは姪っ子とメイドとアンドロイドを掛け合わせた造語であり、最近流行のフェティシズムであった。
あれを買えば仮想現実などではなく、現実に近い姪っ子がメイド姿で家で待っていてくれるのである。
ローンを組めばいいのだろうか、リボ払いならどうだろうか。
いや、その前に以前買ったムードオルガンを粗大ゴミとして処分する方が先であろう。
私は前の彼女との喧騒の日々を思い出しかけたが、それを姪ドロイドとの日々を想像して打ち消すことにした。
まず、購入したらちゃぶ台を挟んで姪ドロイドと会話をしたい、いや説教をしたい。
そして、姪ドロイドが「(泣)」姿を見るのだ。