2019-11-29

「やっと日本に帰れるね!」

アブダビの乗り換えで、日本人家族の会話を耳に挟んだ。

「やっと日本に帰れるね!」

女児が嬉しそうに話している。どうやら、日本帰国する家族らしい。私は二年以上も日本語の会話をしていなかったため、なぜか嬉しくなってその家族に話しかけようとしてしまった。呼吸を落ち着けて、立ち止まり、その家族に近寄ろうとしたところで思った。その家族には日本人など珍しくないのではないか、と。それもそうである日本行きの便など日本人で満ち溢れているのだ。なにも珍しくはない。なにか理由がわからない微笑みを浮かべたおじさんが近寄ってくるとして、彼らにはなにも愉快なことなど無いのだ。

私はオーストラリア学会からアブダビフランクフルト経由でベルギーの小さな街へ帰る道中であり、両親が亡くなって以来もう長いこと日本に帰っていない。日本行きの便か、と思った。

私が日本に帰ったとして、誰と会えるだろう。突然連絡を寄越して「会おう」などと言ったところで誰が都合をつけてくれるだろうか。新しい環境で忙しさにかまけて長いこと(10年以上も!)連絡をつけていなかった友人たちを思った。腹を割って話し合えるというよりも、珍しいもの見たさで私と会ってくれるのが関の山ではないか

日本とのつながりはもう匿名SNSを覗き見ることぐらいになっていた。私も匿名でその会話に参加することもあったが、自分身分は完全に隠していた。日本語のtwitter上ではよく「日本アカデミアは本当にヒドい」と息巻いている人たちを見かけたが、その外側ではまた別のことが求められるのだ、と思った。

現在住んでいる街にも日本人コミュニティはあるものの、一度その会合に参加したきり全く関わっていない。なぜ彼らは国外に来てまで序列をつけようとするのだろうか。本当に不毛だと思う。

私は私でドイツ人の妻と楽しくやっているが、ふとした時に日本コンビニ温泉花火大会を思い出してしまう。同じような境遇日本人は一体どうやり過ごしているのだろうか。

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