取材の経験もなしにプレスカードもなしにカメラの使い方もしらずにスクープどころか記事一本も書かずにばらばらになってしまった。
あれから25年が経つ。
彼女が落命した内戦の地は今は平和だ。けっして安定してはいないが。
そうなったらいやだ。
そんな依存症で苦しむより戦場でミサイル食らって死ぬほうがいい。
とつぜん意識がとおのき膝が折れ右半身と首をコンクリートに打ち付けた。
私は倒れていた。
撃たれたと思った。
ついに、やっと、ほんとうにやっと私は撃たれることができた。
苦痛はなかった。人は脳か心臓か大動脈が破壊されると眠るように崩れ落ちる。
やっと俺も撃たれた。
やっと俺も撃たれたんだ。
やっとみんなといっしょになれる。
嬉しかった。
ほんとうに嬉しかった。
みんなみんな撃たれて先に行ってしまうのに、いったいなぜ自分だけ生きているんだと、そんなことばかり考えながらの人生だった。
やっとそれが終わった。
へんな責め苦がついに終わった。
でも酔いが覚めて意識がもどり状況を把握した。
自分がまだ死んでおらず、撃たれてすらいなくて、たんによっぱらって昏倒しただけだった。
とても悲しくなった。
みんなに会えるまであと何年いきなきゃならないんだろう。
遠い昔に別れた仲間のために"What a Wonderful World"を歌った。
スーダンにでも行ったのかよ