わりとどこにでも落ちているがいつも落ちているわけではない
落ちているとおっ、と思う 別段いいものでもないはずだが拾い物をした気持ちになる
猫のヒゲは意外に太い 「かため」の歯ブラシの毛のような質感と太さで歯ブラシの毛の5~6倍くらいの長さで存在感がある
見つけて拾った後なんだかもったいないような気分になり
ときおり自分から抜け落ちたそのヒゲをみつけて老猫が狂ったようにじゃれついて遊んでいる そして飽きる
短いエキサイトの末にヒゲは毛足の長いカーペットのどこかに紛れて見つからなくなる
猫が先に失った拾ったヒゲをふたたび失ってなんとなく残念な気持ちになり
まだ抜け落ちてない立派なヒゲのたくさん生えている本人におーいおまえーっていう気持ちになる
つい先日階段で拾った最新のヒゲは以前猫がどこでだかなんでだかで切ってしまったもので
根元からまた「かため」の歯ブラシの毛のようなヒゲがだんだん伸びていくのを見守っていて
元の長さの半ばほどまで伸びてきたのを確認してはよしよしと思っていたのだが
いつの間にか抜けていたらしくあー、という気持ちになる 先がよれよれだけどせっかく伸びたのに、あー、という気持ちになる
いつもよりずっともったいないような気分になりまた拾ってパソコンデスクの端に置いている 折々に手にとる 眺めている
ちぎれたヒゲがまた一生懸命伸びていつのまにかまた抜け落ちてその経過を余さず人間に見られているそのことが
なんとなくその大元の猫の生きているさまをまざまざと思い起こさせていとおしい感じがする
なんとなくこのヒゲは捨てないで置こうと思った フィルムケースの中に移しておいた
やっぱりみんな拾ってとっておくものなんだな 古いのもとっておけばよかった
「しなやかな魚の骨」、なんてすてきな表現だろうか
ひげケースなんてものがあるのを知ってぜひ買ってみようと思った かわいいお菓子の缶もいい
ダニが繁殖してる
猫のひげケースの存在を知らせたい…
どこかアンニュイな雰囲気と猫のヒゲに対する変態なまでの異常な執着性が伝わる良い文章だとおもった
梶井基次郎の愛撫だっけ 猫の耳がどうとかいう話 を思い出した
関係ないが、エリア88でマッコイ爺さんが「そりゃ猫のヒゲだ」と言っていたセンサー、あれコーナーポールって名前だったのな。近頃じゃ付けてる車なんか見かけなくなったのです...
以前買ったお高いチーズの入ってた箱が、けっこう可愛くて捨てがたかったので、猫のヒゲ入れとして今活躍してる
それ、しなやかな魚の骨