樫妻悦宏さん(仮名)
東京都郊外のマンションを拠点に置く、とある振り込め詐欺グループの中心人物である
(中略)
この日、ある異変が起きた。
いつものように、受け取り場所の手配と見張り要因の募集を部下であるヤマシタに依頼するため、電車でマンションに向かう。
樫妻はマンションに着くなり、自分の席に座り、スマホと新聞を確認・・・。
このとき、樫妻は、部下への指示を完全に忘れていたのだ。
そこに、部下の一人、ヒロミと呼ばれる男が樫妻に尋ねた。
ヒロミ「リーダー、グレープ(今回の詐欺事案の合言葉)はどうなりましたか?」
樫妻「……」「ああ、グレープはまだ連絡待ちだろ」
樫妻「あれ、ネグラ(詐欺被害者)もう受け取り?」
事務所は、騒然となる。
―――
樫妻「…はい、ありがとうございます」「ええ、それはもちろん」
幸い、別の詐欺グループからの応援により事なきを得たが、謝礼という名目の余計な出費というダメージを負ってしまった。
樫妻のミスは、これが初めてではなかった。