なんにも言い訳できない。わたしは10歳上のお客さんと恋に落ちてしまった。しかも薬指に指輪をはめた。最初は苦手意識が強かった。顔がよくて背が高くて仕事もできる。人当たりもよくて奥さんの悪口も言わない。完璧な男に偏見を抱いてしまうわたしはどうせちやほやされてんだろ、ぐらいに思ってた。でも今となれば不思議と記憶に残ってることが多かった。かなり酔っ払って店にきた日。わたしは席につかなかったけど、ソファーに体沈めてぼけーっとしてる姿みて、じゃあ店にくんなよとか思ったっけな。そのときは愛情の裏返しとかじゃなくてほんとに嫌だったのに気づいたらこんなよくわかんない関係になっちゃったな。あの頃が懐かしい。薄い記憶の中にいる、大嫌いだったあなたの影を見つけてはなぜかその頃に戻りたくなる。今はあなたが会社の人と店に来るとき赤の他人のふりして話すけど、それももう飽きたしな。本当に他人だった私たちを思うと燃える。奥さんが魚焼いてくれて食べた、とかそんな話ししたね。今じゃ、あってないものだとしてるからそんな話できないね。最低だ。こんな仕事してること、こんな関係持ってること、お父さんとお母さんに謝りたい。魚を焼いてくれるあなたの可愛い奥さんにも。あとお店のマスターにも。ごめん。でも好きみたい。腹立つことも増えたけど好きみたい。向こうのことは全くわかんないけど。他にも女の子がいるのかもしれないけど。わたしはいないと信じてるよ。そもそも私のじゃないのにね。正確に言えばこれは恋じゃないとわかってる。ただの欲を満たすだけの手段だと。もうあとはこのまま朽ちていくだけなのに、あなたの人柄の良さがそうさせてくれない。ずるい。
訳「となりの芝は青い」1行で済むぞ
万能かよほんとバカだねえ。ヒキニートハゲ散らかしの芝生は青く見えるのか?