2018-12-08

親父の雀牌

うちの実家には親父の雀牌があった。

子供の頃の私はその雀牌を使って上海をよく遊んでいた。

しかし、私が知る限りその雀牌で麻雀が打たれたことはない。子供の頃はその理由がわからなかった。

私もある程度大人になり、ネット麻雀を通じて麻雀を覚えた。私が麻雀を覚えたことを知った友人たちは時々私を麻雀に誘うようになった。

友人同士の麻雀お金をかけることはなかった。ネット麻雀で覚えた私は、牌の配り方や取り方、王牌の作り方などを教わりながら、聴牌しても自分判断しなければならないリアル麻雀おっかなびっくりしていた。しかし、友人の家にある雀牌を見て、うちの雀牌はちょっと凄いのかもしれないと思うようになった。

まず、実家のは背面が竹でできている。そして、全体的に角が削れている。これはあらかじめそういう形ではなかったことが明白である。なぜならその雀牌には花牌という普通麻雀では使わない牌も付いており、その花牌と他の牌では角の丸みに明らかな差があるのだ。これはプラスチック製では現れない使い込まれ方だ。

これ、もしかして今は手に入らない象牙製なのかな?と思って、ある日親父に訊いてみた。親父は笑って、「そんな高級品うちにはねーよ」といっていたが、実際どうなのかはわからない。

重ねて親父に訊いてみた。「なんで今は麻雀しないの?」そしたら答えはすぐに帰ってきた。「もう面子がいないからなぁ」と。そんな寂しい理由でもうこの雀牌は使われないのだろうか、そう思ったらつい、じゃあうちに友達呼んでこの雀牌使ってもいい?なんて訊いてしまった。が、ダメだとあっさり言われてしまった。その答えにブーイングをしたら、親父は笑って言った。「その雀牌、ガン牌ができるからな」

雀牌をよく見ると背面の竹と本体の接合部分が割れていて、接着剤修正されているものが多い。確かにこれは少し頑張れば簡単にガン牌ができてしまうだろう。

そうか、もうこれでこの雀牌はお役御免なわけだ。だから子供上海で遊ぶくらいのことにしか使われていないのか。子供の頃からの疑問に納得がいった。

しかしお前麻雀を覚えたのか」

今度は父が私に話しかけてきた。ネット麻雀で覚えたんだよ、と答えて私がよく麻雀を打ちに行くサイトを教えると、そうか、じゃあ俺もやってみるかな、と、父がたどたどしい手つきでパソコンに向かい始めた。

私は少し父にサイト説明をする。

そして色々教えた結果、父は私が普段居座るのとは違う、喰いタン赤牌なしの部屋に落ち着いた。父が言うには喰いタン邪道だそうだ。

父はそこそこ強いらしいが、ネット麻雀の成績は良く知らない。

あと、最近喰いタン赤牌ありの部屋にも出没するとかしないとか。まぁ、喰いタン赤牌なしの部屋は過疎ってるからね……。

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