2018-11-02

堂々と歩いた

ぼくの顔には傷がある。小学2年生の時に交通事故で負った傷だ。

どんな感じの傷かっていうと、同級生にはフランケンシュタインとか言われてたな。頬にしっかりと傷跡が残っている。

その傷に触れてもらいたくなくて、ぼくはどんどん人とコミュニケーションを取るのが苦手になっていった。

電車に乗るとぼくの顔をジロジロ見られているような気がして息苦しかった。

この傷がなければどんなに幸せだったのだろうか。そう考えると涙が出てきた。

高校卒業して就職をした。その時も人前にでるような仕事じゃなく、なるべく人と接しない工場を選んだ。

その当時のことを思い返し見ると1日の大半を顔について考えていたような気がする。

就職してから、2年程してぼくの唯一の友達から電話が掛かってきた。

「○○久しぶり。渋谷ハロウィンに行かないか?」

ぼくは一瞬言葉に詰まったが、行くことにした。

渋谷ハチ公前で待ち合わせをすることに。

メイクというやつがあるらしいが、ぼくの顔には元々傷がある。コスプレフランケンシュタインだ。

待ち合わせ時間ハチ公前に行くともう、人が溢れていた。

人混みを掻き分けてなんとかKまでたどり着いた。

Kはチャーリーとチョコレート工場ウィリーウォンカのコスプレをしていた。

「おう似合ってるじゃん○○」

Kは嬉しそうな顔で言った。

ぼくとKはスクランブル交差点を突っ切って、109側の道を歩いて行った。

こんなに人がいる渋谷を見たことがなかった。人とぶつかりそうになりながらなんとか進んでいく。

若者外国人が多かった。写真を撮ろうと言ってくる人もいた。

しばらく歩いてると、ぼくは顔の傷のことなんて忘れていた。

人はあまり他人の顔なんて見ちゃいないんだ。自分が思っている以上に人は他人に対して無関心で、興味を持っていないんだ。

自分の中で何か重荷が取れたような気がした。

人生で雑踏の中をこんなに堂々と歩いたのははじめてかもしれない。

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