結婚式に呼ばれた。
結婚式の山場である花嫁から父親への手紙を読むシーンに、会場は涙に包まれた。
暖かな家庭で、大切に明るく育てられたような花嫁さん。
私もその光景を見て泣いていた。
しかし、私の涙は感動ではなくて、辛い気持ちで涙が止まらなかった。
なぜなら私の父は数ヶ月前に亡くなったからだ。
父は54歳という若さでこの世を去った。
私は27歳だ。まだ花嫁姿も見せられず、してあげたいことがたくさんあった。
私が父にしてあげたいことの1つに、結婚式で感謝の手紙を読むということがあった。
もちろん叶うことはなかった。
そして、これから叶うこともない。
花嫁を祝う気持ちよりも、自分の悔いた気持ちが勝ってしまったのだ。
父に感謝の気持ちを伝えている花嫁を見て、私は羨ましくなってしまったのだ。醜い感情だ。
私には好きな人が居る。
それは、決して叶うことのない相手だ。
その好きな人は、私の友人でもあり、私の女友達の彼氏でもある。
この気持ちはなんとなく感づかれてしまっている。だから好きな人は優しい。
私は2人のことが大切なので、関係を壊したいなんては思っていない。
できれば幸せでいてほしいと思っているのに、2人が仲良くしている時には心がギュッとなってしまう。
本当に2人の幸せを願えていないのかもしれない。
花嫁から父へのスピーチを聞いて辛い、友人カップルの楽しそうな姿を見ても辛い。
幸せで包まれている会場で、唯一わたしだけこんなにも黒い感情が渦巻いていたのだ。
自分を心底嫌になった。