小学五年のときの話。俺は友達と、取ってつけたような狭い公園でサッカーもどきをしていた。そこにバイクに乗ったおっさんが声をかけてきた。この辺で水が飲める場所はあるか。俺たちはやはり取ってつけたような公園内の手洗い場のことを伝えた。地域の人と交流を持ち、親切にしましょうって教えられてきたからな。おっさんは水は飲まず、俺たちの遊びに加わった。
しばらくサッカーやキャッチボールをして、ジャングルジムで遊ぶことになった。おっさんはてっぺんに登った俺たちの股間をさりげなく触ってもんだ。俺は何をされたのかさっぱりわからなかったが、嫌なことをされたというのはなんとなくわかった。おっさんがその前後に平然として顔色一つ変えず、親切なおじさんの顔をしていたのがショックだった。おっさんは俺達の家がどこにあるのか聞いた。近くににあるマンションかと聞かれ正直にうん、と答えてしまった。地元の小学校なのか、親は普段家にいるのか、何時頃帰るのか。おっさんがそれを聞いて何をしようとしていたのか、今でこそ考えるだけで身の毛がよだつが、当時ただのハナタレ小僧だったから、正直に話した。嘘はついてはいけないと教わっていたからだ。やがてベビーカーを押した同じマンションの人がたまたま遊びに来て、俺達の方を見て何かを思ったのか、増田くん、その人は誰?と聞いてくれて、おっさんは今思えば焦って逃げるようにその場をあとにした。その後も俺たちは同じ道で登下校し、同じ公園で同じような時間に遊んでいたが(なんとなく親には言えなかった)おっさんに会うことは二度となかった。幸運だったと思う。俺たちはどう考えてもスキだらけだったから。おっさんが誰なのかは分からないが、激痛と苦しさのあまりすぐに死にたいと思いながらもなかなか死ねないという苦痛を味わいながら、じわじわ死んでほしいと思う。