交差点の中心にレンズを向けながら、一体どうしてここに自分の心が動いたのかを考えていた。
わたしはただ、自分の芸術性に向かい合い耳を傾けていたにすぎない。
しかしふと、レンズに向けられる視線がどれも訝しげなものだということに気づいた。
わたしは写真に写る個人なんかに興味はない。しかし、考えてみれば道行く人間にしてみれば見ず知らずの人間のカメラに収められることに何のメリットもないことも理解できた。
わたしは黙ってカメラのストラップを背中に回し、その場所を後にすることにした。
その後は人目の少ない場所を探しては、渋谷という街が抱えるジレンマに向けてにシャッターを切っていた。
東京の、つまりは日本の最先端でありながらも、歪なものを抱えたままの街並みはいくつもの面白い顔を見せてくれた。
そうして誘われるがままに路地を進むと、わたしは歓楽街の中にいることに気づいた。
そこにはレンズを向けるべきものは何もなかったが、すれ違う人間は一様に首からカメラを下げるわたしを嫌うように避けていった。
わたしに悪意があるわけではない。
しかし、もし街中に拳銃を携えた人間が歩いていたらどうだろう。
きっと人々は訝しげな視線を送り、できれば関わりたくないと避けて通ることだろう。
今の世の中において、すでにカメラの地位とはそういうものなのだ。
ローアングラー「まだいける・・・」