「心が叫びたがってるんだ」はそんな言葉の怖さや大きさを突きつけられる作品である。
主人公の成瀬順は、父親の浮気をそれと知らず無邪気に母親に伝えてしまい、家庭が崩壊するきっかけを作ってしまう。
そして、母親の拒絶と父親の心ない言葉によって、深く傷つき、言葉を失ってしまう。
成瀬順は、ふとしたきっかけから学校行事の実行委員会に指名され、
その準備を通して、悩み、傷つき、成長していく。
田崎大樹は、思いを怒りという間違った形でぶつけてしまう。
主人公の周りを取り巻くのはそんな等身大の悩みを抱えた高校生達だ。
本音を言えずに後悔することがあった。
周囲に合わせて本音を言えないことがあった。
どうしたら良いか分からずに周囲に当たってしまうことがあった。
そして、喋るのが怖くなってしまったことがあった。
多くの人が感じたことがあるであろうこれらの感情がリアルに描かれる様子は、正直、見ていて胃が痛くなる。
「言葉は傷つけるんだから。絶対に、もう取り戻せないんだから。」
この苦しみを皆は知っているはずだと、それなのに忘れてしまっていないだろうかと。
そんな強いメッセージの一方で、高校生の世界はやっぱりとても狭いものなんだと、
誰が誰を好きだと一喜一憂して、それが全てなんだと、その想いが乗る言葉は一層強い力を持っていたんだと、
良い映画だった。