分からなくても本筋には関係ないが、気づくとたまに出てくる変な引っかかりがすっきりするようなもので、まあ女と思わせて男だったとか、日本舞台と思わせてアメリカだった、みたいな叙述トリック的なものだと思ってくれればいい。
発表した後、それらの仕掛けには概ね気づいてもらえて嬉しかったが、その中の幾つかはある程度専門的な知識が必要なこともあって、指摘されることはなかった。
が、先日、それらを指摘するメールが届いた。
ついに気づいてくれる人が、と喜び勇んだが、読み進めるとどうも様子がおかしい。
その人は引っかかりには気づいたものの、それをこちらの認識ミスとして糾弾してきていたのだ。
そこに気づいたなら、もうちょっと調べれば正解にたどり着くのでは、という生半可な知識を元にして。
一応質問という態をとっていたものの、こちらが間違っているという前提で書いているのは明らかで、最後は「いい加減な作品にはがっかりしました」と締められていた。
当然嫌な気持ちになったし、言い返してやりたい気持ちはあるし、気づいてくれたこと自体への嬉しさはあったが……と迷った末、以下の理由により返信はしないことにした。
・多分、返答に厭味な感じがにじみ出てしまうだろう
・言い返されたらカチンと来て更に粗探しをしてくるタイプだろう
(指摘の中には労力の釣り合いの関係で妥協した部分も確かにあった)
この人の中では俺は「いい加減な作品を作る人」のままだろうが、下手に関わらない方がいいという判断だ。
それにしてもがっかりした。
作者が馬鹿だと思うのはまあいいとして、どうしてその辺りを隠して普通に質問してくれなかったんだろうか。
それなら俺は気づいたことを褒め称えて喜んで秘密を教えたし、相手も納得するかどうかはともかくちょっといい気分になれただろう。