女子には分からないと思うが、小学生男子にとって校内で大便をするというのは命がけの行為である。
トイレの個室から出てくる姿を見つかったら最後、「ウンコ野郎」とのレッテルを貼られ、嘲笑われ、女子にまで言いふらされる。
御手洗見廻組による御用改めも頻繁に行われており、小便器より奥の個室へは迂闊にも近づける状態ではなかった。
そんなある日の昼休み、友達のYが意を決したように俺にささやいてきた。
「う...うんこもれそうや。トイレ行かなもう無理。頼む。外を見張ってくれへんか」
必死の形相のYの願いを断れるはずもなく、俺とYは視聴覚教室脇のトイレへと向かった。
学内でもっとも人通りの少ない場所。ここなら見つかる可能性は低い。
「頼むで。俺、行ってくるわ」
脂汗を滲ませながらトイレの奥へと消えていくY。
すると、まもなく、廊下の向こうから複数人の話し声と足音が聞こえてきた。
あ、あいつらは御手洗見廻組!
そう、やつらの御用改めはこんな辺鄙な場所にまで及んでいたのである。
どうする、どうするよ俺!?
逃げたほうがよくないか?
いや、見張りを頼まれた以上、逃げるわけには...
っていうか、見張りって何なん?何ができるんや。
Yに伝えるも何も、さっきからブリブリ滅茶苦茶でかい音が続いているし、全然おさまる気配もないぞ...
あれこれ逡巡しているうちに見廻組の一人がトイレの入り口に立っている俺に気がついた。
「あれ、こんなところで何してるねん」
「いや、ほら、あれ...」
「うん?」
「あ、あそこで誰かウンコしてるで!」
こうして俺は見廻組と共に個室への放水活動を行ったのであった。
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