自分の贔屓が素晴らしい演目に恵まれて良い役を貰った時も、そんなに面白くない舞台で出番が少ない時も。席を埋めることに使命感を感じているファンは多いと思うし、きっと贔屓に顔を覚えられている人も沢山いるだろう。健やかなるときも病めるときも支える、という意識が強いんだなぁと思う。
たしかに、どんなときも支えてくれるファンは心強い存在なんだと思うし、空席よりは誰かが座ってたほうがいい。そういうファンの人はきっと毎日お手紙を書いて贔屓を激励しているし、あたたかい笑顔で贔屓と接触しているだろう。出待ちとか、握手会とか。
でも、初演にしても再演にしても、情報解禁された時点で演目に対して文句ばかり言うのは、どうなんだろう。
舞台が開幕して観劇してから言う文句は、いくらでも言ったらいいと思う。しかしまだ始まっても居ないのに、こんな舞台は嫌だとか期待できないとか、マイナスな言葉ばかり。そりゃあ、贔屓により素晴らしい舞台に出てほしい気持ちは痛いほどわかる。それでも、彼らだって言われるがままにその舞台に出ているわけではなく、己の決断でそこに立っているのだ。決めたのは、彼らだ。
当然、ファンは情報の時点で散々文句を言ったその作品にも、贔屓が出演しているので通う。不安なら観てから増やせばいいチケットを、既に何枚も持っている。(まぁこれは、万が一面白かったときのチケット完売を恐れての保険かもしれないし、埋まらなかった席を自分が埋めている優越感かどっちかはわからないけど。)
嫌なら行かなきゃいい。でもそういうわけにもいかないのが舞台俳優のファンの複雑なファン心理だということもよくわかる。
「それでも私はチケットを買った」という顔をして、連日座席に座る。
それは、ちょっと濁っていて嫌だな、と思った。