余裕で三桁を越えた医療費も、高額医療費制度のおかげで何とかなった。
父の容態の方は、いま人工呼吸器の世話になっている。
幸いと言っていいのか、寝たきりなどにはなっていないが、元看護婦だった母曰く、
この病気だと、はやければ一年で死亡、良くても五年持った人はいないそうだ。
正直なところ、そう言われてもまるで実感が無い。
一年後にはいなくなっているかもしれない、と言われてもピンと来ない。
父は暴力などは全くふるわなかったが、金と女にだらしなく、自分が小さな頃はいつも母と喧嘩になっていた。
その頃は毛嫌いもしていたが、大人になるにつれ、そういった感情も消えてきた。
それでもまあ、仲が良いわけでもない。顔を合わせれば挨拶する程度だ。
だが、こういう状況になると、自分の感情を持てあますようになった。
だが、親の余命が一年と言われた時、自分は何をすればいいのか。
だが自分には仕事もあるし、私生活でもそこまで余裕が有るわけでもない。
結局、何も出来ないまま三ヶ月が過ぎてしまった。