フィクションとはいえ、よく練り込まれたストーリーで、純粋に物語として楽しめました(特に最後の部分)。実際に起こった戦争が舞台になっていて、しかも当時の情報がよく調べられているなぁ、と感心しましたが、あくまでフィクションとして楽しむべきで、これを読んで実際のゼロ戦のパイロットたちを美化したり、当時の軍部の矛盾を批判したりすることには意味がないように思いました。
つまり感動するにはいいですが、戦争のことについて考えるための本ではないということです。
しかし作者としては、主人公の兄姉に軍部の矛盾を語らせることによって、自らの戦争に対する考え方を示したいようで、そういうところがやや示唆的な部分なんではないだろうかと気になりました。やや穿った見方をすると、この本は、インタビュー先の老人(元軍人)たちが、戦争の状況(と宮部久蔵との思い出)を語り、主人公の兄姉が戦争に対して理解を深め、意見を交わす、といった構造になっています。老人たちが語る戦争の状況が詳しすぎて、宮部久蔵の感動的な物語はおまけみたいなもんになってしまっている印象を受けました。これほどまで詳しく戦争のことを調べ上げ、さらに作者自身もそれなりの意見を持っているのであるならば、戦争についてのレポートとして新書とかで売れば良かったんではないか、とも思いました。
幾ら詳しく調べてても専門の学者には劣るわけで自分の意見を世に広めたいなら文章力生かして感動話に絡めるほうがいい戦術なんじゃないの 小説なら多少事実誤認があろうと「フィク...
小説にする意味ないよね、あれ。 姉の結婚だとか、主人公の人生の葛藤とか何の意味があったのだろう?