日雇い増田は、とにかく一度動揺すると何事でも悪い方向に考えて、その考えにとらわれて次の作業でミスを連発しがち
昨日もそういう日だった
「無能」「スクラップ」「社会の規格外品」「ジャンク」「バーゲンセール品」「○○○した方が・・・」
「社会のレールから外れた規格外人間は、バーゲンセール品かスクラップ、ジャンク品としての扱いしか受けられなくなる」
「やはり無能は死んだ方がいいのかな・・・」そうつぶやきながら、ひなびた温泉地をふらふらさ迷う
あちこちに地域の人達の為の浴場があった 洗面器とタオルを小脇に抱えた爺さんが通りを歩いている
この温泉地の住宅街は建物の老朽化が進み、「路地」といえば聞こえがいいが「スラム街」といっても通用するほど襤褸っちい
そんな街を「スラム街」にしていないのは通り過ぎる人々の表情の穏やかさだ
都市部にもっと近くて発達していても荒んだ空気のあり凶悪犯罪がよく報道されているあの地域とは「街の空気」がぜんぜん違う
「その原因は何だろう」そう考えながら増田は温泉街の住宅地を中心部の方へ足を進めていく
200円払って、脱衣所に入ると貸切状態だった シャワーは無い
蛇口は2つ 熱い水が出る蛇口と冷たい水が出る蛇口を同時に洗面器に入れて自分で温度を調節する必要があった
浴槽は一つだけで大きい 温度は44度くらいとかなり熱い
おそらくそれゆえに長湯する人が少ないのだろう 足の疲れを取りたい増田にはこの熱さはむしろ願うところだ
最初に脚だけ浸かり足湯状態を楽しみ、体が熱さになれてきた所で肩まで浸かる
体の疲れが取れると共に増田の悩みも熱い温泉に溶けていった 温泉には日々の心の疲れも取る効果があるのかもしれない
これで明日は元気に生きていけそうだ
温泉から出るまでずっと誰も来なくて200円で一人貸切状態だった
着替えると足が温まった分、靴が少し蒸れるようだ
そう思っても草履など売ってる店が見当たる訳が無く