大学のとき、いつも前から2番目の左端に座っている女性がいた。
授業の履修は自由とはいえ、同じ学部学科だと時間割は被ることが多く、週に何度か彼女を見かけた。
垢抜けない服装、髪型、メガネ。ぽっちゃり体型。いつも1人でいた。
前の方の席に座っている人間は大抵いつも同じだったので、名前は知らずとも顔を覚えてしまったのだ。
韓国人留学生とか腐女子3人組とかオタグループとかぼっちとか、いつもそんな人たちがいて、
僕はよくサボったり遅刻したりしたが、彼女は一日も欠かさず出席しているようだった。
ノートは完璧に取っているし、授業開始5分前には定位置についている。
2限の授業が終わるとすぐに教室を出ていき、
ベンチで自宅から持ってきたと思われる弁当を、やっぱり1人で食べていた。
テーブルがある空き教室で食べればいいのに、と僕はよく思った。
そのうち、僕は彼女がいつも何を考えて授業を受け、弁当を食べているのか気になってきた。
何が楽しくていつも1人でいるんだろう。
ある日、彼女が弁当を食べているベンチの周りに人がいなくて静まり返っていたときがあった。
誰かに見られることもなさそうだし、ちょっと話しかけてみようかなと思った。
まあ実際は思っただけで、そんなことをする勇気は僕にはなかった。
同類だと思って同情してんじゃねーよキモオタ、とか彼女に思われるのはご免だった。
それからも2、3度話しかけてみようかなと思ったこともあったが、結局実行に移すことはなく。