2024-01-07

犬を飛行機貨物室に載せたことがある

きっかけは母の知人が飼う犬が仔犬を産んで、譲り先を探していたことだった

その知人が住むのは我が家から飛行機か船でしか行けない遠方だったし当時の我が家には年老いた先住犬がいたので、その話を聞いた私は当初「おめでたいことだけど我が家が関わる事柄ではないだろう」と考えていた

もっと正直なことを言うと、自分受験を間近に控えた学生だったこともあり、そういうゴタゴタはやめてほしいとも思っていた

だが母は違っていた

「遠く離れた地域に産まれた知人の仔犬を是非とも我が家に!」と父や兄弟や私に承諾を得ることなく、勝手に仔犬を一匹迎えることを決めてしまったのだ

飛行機か船でしか行き来できないので、仔犬は飛行機貨物として積まれてくることになるだろうと言う

母によるこの一方的な決定を知った私は「今の我が家環境でやることなのか?」「そもそも仔犬をそんなところに載せてまで我が家で迎える必要はあるのか?」と制止の気持ちを込めつつ問い質したが、母は聞く耳を持たなかった

結局ズルズルと仔犬を迎えることになり、最寄りの空港に届けられる日がきた

母と私は空港に迎えに行ったのだが、引取場所旅行などで旅客が利用する建物から離れた、貨物を取り扱うスペースに建つ小さな事務所のような場所だった

どんな手続をしていたかは今ではあまり思い出せないが、小さなゲージの中からキャンキャンと鳴く声を聞いた

今だから書けることだけど、空港に着くまでの私は内心で「引き取ってゲージ開けたら死んでる可能性もありそう……」と思っていたし(流石に母にはそんなこと言えなかった)、そもそも仔犬を飼うこと自体に反対していたのだけど、小さくて甲高い鳴き声にホッとしたのは覚えている

 

ペットを飼うというエゴにわざわざ飛行機に載せてまで迎え入れるというエゴの塗り重ねで我が家に迎えられた仔犬は今年の誕生日で15歳になる

加齢で目こそ白内障になっているが、幸いここまで大きな怪我病気はずに生きてくれているし、ご飯は毎食しっかり食べてくれるし、台所で葉物野菜を切る音と鶏肉調理する匂いはいち早く察知して駆けつけてくる

これを書いている今はソファ定位置でプウプウと寝息を立てて眠っている

元気でいてくれて嬉しいけれど、外を通る車や工事で大きな音がすると怖がるのを見ると仔犬の時の経験のせいなのかもなと申し訳なくなることもある

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