「そういう個人的な内実を知るのって、一定の信頼関係を得てこそだと思うんだが。お前達のやっていることは順序が逆だ。信頼回復のためにやっているのなら、こそこそ探るようなもんじゃない」
「分かってる。それでも知らなきゃダメなんだ」
そう押し通すしかなかった。
そんな要領があったら、そもそもこんな状況にはなっていないだろう。
だから信用を得るには、もはや情に訴える他なかった。
「掘り起こしたせいで土壌が崩れる、なんてこともあるんじゃないか? かえって関係が悪化するかもしれない」
「それで怪我するなら、僕たちの不注意だよ」
俺たちは“自分が考える最も真剣な表情”をして、兄貴に情熱的な眼差しを向けた。
「はあ……どうせ開けてみるまで分からないしな」
兄貴は溜め息を吐きながら、呆れ気味にそう言った。
俺たちの真心は伝わらなかったようだけれど、なぜか話す気になってくれたらしい。
「そうだな昔の話をしよう……っていうほど昔でもないが」
俺がドッペルに初めて会った日だ。
正確に言えば、俺が始めて認識した日というべきかもしれないが。
俺は帰路の途中だった。
空には暗雲が立ち込めていて、今にも降り出しそうな湿気を感じる。
まあ傘を持っていたから別に問題なかったんだが、なかなか雨が降らないのがもどかしくてな。
ときどき小さな水滴が肌を掠めるような感覚はあっても、傘を差すようなレベルじゃあない。
いっそのことドシャ降りにでもなってくれたらいいのに、なんて思う程だったよ。
そんな状態が続いたまま、家に着くまで残りわずかってところかな。
前方に弟の、お前の後ろ姿が見えたんだ。
「え、俺?」
回想に割り込んでくるな。
当然、実際は弟じゃなくドッペルの方だ。
その時は変装してなかったようだが、霧が出ていたせいでボヤけてたんだよ。
あいつは当時から立っ端は同じくらいあったし、遠くからだと見分けなんてつかない。
それで同じ学生鞄を持ってて、俺の家近くを歩いているってなったら、勘違いしてもおかしくないだろ?
俺は懐疑なんて全くなく、小走りで駆け寄ったさ。
「よー、弟よ!」
そう呼びかける段階で、俺はやっと明確な違いに気づいた。
その時には、もはや手遅れ気味だったが。
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≪ 前 だけど、この日のタオナケは、しばらく経っても瞳の輝きが治まらなかった。 「あ~あ、どっかにいい感じの恋愛模様(ラブ・パテーン)転がってないかな~」 儚げに虚空を見...
地球は回っている。 そして太陽のまわりを周っている。 いわゆる自転と公転ってやつだ。 これらが巡り巡って、太陽が地球を照りつける箇所が変わってくる。 それによって気温が上...
久しぶりにリアルタイムで見たわ
はいはい……昨日の靴下探して散歩しますよ……恋は盲目……リピートアフターミー……恋は盲目……
≪ 前 さすがに弟と間違うなんて失礼すぎる。 そりゃあ、もう焦った。 当時は、ほぼ面識のない相手だったからな。 弟の友達だが、無口な子だったからマトモに話したことはない…...
≪ 前 「それが今のドッペルを形作っている、いわばルーツってわけだね」 なぜドッペルがそうしようとしたのか、具体的な理由はハッキリしない。 そりゃあ、いくらでも推測はでき...
≪ 前 「俺はドッペルを弟と見間違えた。その状況を切り抜けるため、どうしたか思い出してみろ」 「えーっと、陽気に振舞ってウヤムヤにしようとした?」 「確か、気のいい兄(に...
≪ 前 「要は君らの気にしていたことはマクガフィンに過ぎないってことだ。そこが重要だと考えるのは作り手と一部の狂信的ファンだけ。ヒッチコップの教えを忘れちゃいけない」 い...
≪ 前 俺たちはドッペルを追いかけた。 だけどスタートダッシュで引き離されているのもあって、差を縮めるのは困難を極めた。 さらにドッペルは右に曲がったり左に曲がったり、フ...