ヒラコーこと漫画家の平野耕太の事が好きだった。とても面白い漫画を描く人だと思っていた。
ヘルシングはとても面白かった。独特の言語感覚も、個性のある画風も、厨二をとことん煮詰めたような設定も、何もかも魅力的だった。
あまり筆が早い方では無かったが平均的に1年に1冊単行本を出すというペースをキッチリと守っていた。新刊に待ち焦がれた。待ちに待った新刊を読むと本当に面白かった。
2006年からはOVAも発売された。こちらも半年から1年の間に1本というペースでリリースされた。中々良い出来で原作新刊の発売までの楽しみにしていた。
2008年にヘルシングは完結し2009年に最終巻が発売された。終わってしまう事がとても寂しかったが、既に新作の連載が決定していたのでそちらに期待していた。
同時期に発売された「以下略。」というコメディ漫画も面白かった。ヘルシングにしてもグロテスクな内容も多い本編とあまりにも落差がある単行本書下ろしのくだらないギャグがとても笑えた。
ヘルシングの最終巻が発売されて数ヵ月後、「ドリフターズ」の連載が始まった。あのヒラコーの新作という事もあり瞬く間にヤングキングアワーズの看板漫画になった。
こちらもとにかく面白かった。面白かったが、単行本が発売するペースが遅かった。4巻が発売される頃には作品に対する熱が冷めていた。
5巻が発売されたのは4巻が発売されてから20ヶ月経っての事だった。6巻が発売されたのはその30ヶ月後。漫画を2冊出すのに、4年以上かかった。
内容が幾ら面白くても、この続きを読めるのはどうせ大分先だろうと思ってしまった。OVAのように熱を持続させてくれる展開があった訳でも無い。
熱が冷めると、これまで面白いと思えた所の全てが癇に障った。ヒラコーは毎日精力的にTwitterを利用していた。もう「その時間を使って漫画を描けよ」としか思えなかった。
こちらが新刊を待ち焦がれている時に、ゲームをしているヒラコーが嫌いだった。ふざけた事を呟いているヒラコーが嫌いだった。誰かと絡んでいるヒラコーが嫌いだった。
こんな人の描いた漫画を面白がっていた事が嫌だった。尖った面白いオタクなのかと勝手に思っていた。「自分の事を尖った面白いオタクだと思っている人」にしか思えなかった。
進め聖学電脳研究部で、ヒラコーはスクウェアと、ファイナルファンタジーと、スクウェアファンの事を心底嫌っていた。ネット上の作品アンチのような事を誌面でやっていた。今はこちらがその気分だった。この人の事が大嫌いだ。
今でも「2巻ってニカーンってのばして書くとなんかハマーンみたいでステキですね」というネタはくだらなくて好きだ。ルークとヤンのガンダム売るヨ!!月光蝶!!も好き。他のガンダムネタは全部嫌い。何もかも趣味が合わない。
こんなに嫌いな所があってもドリフターズの新刊が発売されれば読む。嫌いだと思いながら、面白いから読む。ドリフターズの6巻が発売されて1年半以上経つ。俺は平野先生の執筆と、ドリフターズの新刊を待っている。
良かったじゃん。ヘルシング、ついに出るよ!