夜中に起きていたかった。
お父さんが深夜はテレビ見てるし、
お母さんは早く寝なさいって怒るし、
大人になったら、夜中までテレビ見て、好きなもの食べて、いつまでたっても起きてられる。
ああ、いいな、大人って。
大人に、なりたい。
でもね、大人になって、一人暮らしして、わかってきた。
けどね、昔より全然楽しくないよ。
深夜アニメよりも、お父さんの肩越しにこっそり見る難しい映画の方が、キラキラしてた。
どんなにスナック菓子食べても満たされないよ。また、お母さんに叱られたいよ。
でも、スナック菓子食べてないと頭の中でまた仕事の嫌なことがリプレイされてしまうんだよ。
いつまでも起きてられるんじゃないんだよ。
眠れないんだ、どんなに夜遅くでも。
目をつむって眠ろうとすると、まっさらな頭の中には明日への不安と昨日の後悔が滑り込む。
また、あの人とお仕事だ。
どうして私は、どうして、どうして、どうして。
イヤホンが音割れするほどに大音量で音楽を流して頭の中を濁流でまっさらにしないと。でもそんなことしたら余計眠れない。
でも最近何が悪いかも分からないけど、悪いのはわかるから、全否定するしかないんだ。
私がいなければ、私がいなければ、私が、私が。
叱ってくれたお母さんは、離婚した今も父の昔の不満をいつまでも語る日々。
ああ、大人になりたかったけど、こんな大人になりたかった?そんな訳ないね。
大人になれば、子供の自分が抱える悩みなんて解消して、すっきりとした日々を暮らせると思ってた。
たしかに子供時代の小さな悩みなんて今からすれば本当にちっぽけで、でもそれがなぜちっぽけに見えるかというと今私が持っているものの方が大きいと知っているからであって。
ねえ、これが大人の当たり前なの?
じゃあこんな不安に潰されそうな私は大人失格かな?
じゃあ結局私は、大人になれなかったのかな?
ああ、いいな、大人って。
大人になりたい。
よく言われる事だけど、相手や対象が不在の場でその人や物の事を考えると感情がより増幅されてしまうよ。