2015-06-10

スーパーの店員さん

スーパーの店員さんと言えば、やはり一番のイメージとして出てくるのは女性ではないだろうか。

パートのおばちゃんだったり、女子学生バイトだったりが「いらっしゃいませ」と笑顔レジ打ちをしてくれるそんなイメージだ。

しかし私が行くスーパーレジ打ち店員さんには一年ほど前から男性がいる。最初夕方に見ていたもんだから高校生大学生アルバイトだと思っていた。

けれどある時朝に行ってもその彼はいそいそとレジ打ちをしていた。

なるほど。ここで私の興味は一気に彼へ向かう。見たところハタチそこそこの若い彼だ。そんな彼がパートのおばちゃん達に混じり拙い笑顔で「いらっしゃいませ」と接客してくれる。

その拙さと、見た目の良さが相まって私はそこのスーパーで買い物をした時は一番に彼を探した。彼を探してレジ打ちをしていればたとえ買う物がなくったってジュースの一本だけでも、セルフレジがあるにも関わらずわざわざ並んでわざわざ接客をしてもらった。

見るから女性慣れをしていなさそうで、見るから自分に興味のなさそうな彼は、とびきり可愛い顔をしているにも関わらずある時いきなり五分刈りにしてしまう程である。その自分の魅力に気付いていない所も私の興味をそそらせたのだ。

しかし、あくまでお客と店員と言う間柄である。何の知り合いでもない彼のレジにいつも並んでいると、さすがに人に興味がなさそうな彼でも覚えられてしまうだろう。

覚えられてしまっては私の負けだ。あくまで彼に覚えられない範囲のローテーションで行かなければ、不審に思われてしまう。それだけは御免だ。

認識をしてほしい訳ではない。ただ彼の可愛い顔をレジの間だけでも見ていたいのだ。勝手自己分析した結果これは所謂ファン心理なのではないかと心当たった。好きな芸能人最前列で見るファン心理とおそらく同じなのだ。ただ、ただ見ていたい。出来る事なら写真に収めてその写真をずっと眺めていたい。そんな心持ちだ。しかし彼は芸能人でもスポーツ選手でもないので、私が写真を撮ってしまえば一発で通報だ。なので脳内カメラに収めようと何回も何回も彼の顔を見るのだが、ポンコツな私の脳内は綺麗に、完璧に、彼の顔を思い出させてはくれないのだ。

さして興味もない人の顔ならサラサラと思い出すのに、全く使えない。

そしてはた、と気付く。

彼が一生あのスーパーで働くという事実は一切ない事に。

いつ辞めるかも、いつ異動になるのかも、はたまた出世してレジ打ちを卒業してしまう可能性も全くゼロではないのだ。そうなればもう私は彼のレジに並ぶ事も彼に接客してもらう事も叶わなくなってしまうのだ。

ならばその時が来るまでに声を掛けてみようかな?などと思わないと言えば嘘になってしまう。しかし私が彼に声を掛けるには若さも純情さも純粋さも、ビジュアルも何一つ足りていないのだ。

から私は彼に接客してもらえなくなる日まで、こっそり彼のレジに並び何食わぬ顔でレジをしてもらい、薄っぺら笑顔「ありがとう」と言うことしか出来ないのだ。

そして週に数回は彼の顔を必死に思い出して、彼をおかずに自慰に耽るのだろう。

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