2014-04-21

大学の先輩の結婚式の寄せ書きを拒否した。

大学の先輩が結婚した、そのことに対しては普通におめでたいと思うが、でも寄せ書きはしなかった。

ある日同級生から、先輩が結婚するので集まって寄せ書きをしよう、とメールが来た。

昔の仲間とは久しぶりに会いたかったが、特に返信はしなかった。

寄せ書きと聞いて、一応なにを書こうか考えてはみたのだが、あまり気の利いたことが言えるとも思えなかった。

大きなサークルだったから先輩はたくさんいる。この人はそれほどお世話になった人でもなかったし。

ただ、この先輩のことを考えると、いつも思い出すことがある。

それは俺が女にフられて通学路をトボトボと歩いていたときのことだ。

(正確に言うと、一度だけセックスして恋人同士だと思い込んでた女に正式恋人がいたと知ったのだ)

そこへ向こうから自転車に乗った先輩が現れた。

俺は悲しくて悲しくて声も出せそうになかったのだが、無視するのは先輩に失礼だから「あっ!お疲れ様です!」と挨拶をしたのだが、無視された。

今となっては仕方のないことだと思う。

そのとき先輩は、最近できたらしい恋人と2人乗りしていた。

恋人と楽しそうに見つめ合う先輩の目には、俺のことなど、もはや見えていなかったのだ。

そのとき幸せそうな先輩の顔は一生忘れないだろう。

いつでも真面目で気配りができて、周りの人のことばかり考えていたようなあの先輩が、あんなに自分本位な顔をしているなんて。

から憎いと思った。こちらのタイミングも悪かったが、それでも妬ましかった。

さて、先輩が学校を出てから顔を合わせたことはほとんどなかったはずだが、現代にはFacebookというものがある。

先輩は海外旅行に行ってみたり、仕事帰りに皇居を走ってみたり、絵に描いたような余裕の社会人ライフを満喫していたが、なにを思ったのか退社。資格取得から再就職結納写真わずか数ヶ月で退職の報告、そしてその報告の下の方に書かれた結婚の文字……いいね!の嵐。

Facebookにはほかの先輩もたくさんいるから、きっと結婚式写真は盛大にアップロードされることだろう。

そして俺はまたきっと、あのときと同じ、あの幸せそうな顔を見ることになるのだ。

俺は寄せ書きをしなかった。

ただひとつ気になることは、先輩はあのとき恋人結婚したのだろうか、ということだ。

そうであることを願う。でなければ、あのときの俺があまりに救われないから

先輩の性別はあえてボカして書いたが、読む人が各々好きなパターン想像してたもらえたらと思う。

ま、最後まで読む奴なんかいねーか。じゃあね。

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