2024-10-16

「……え?」

ついさっきまで、俺は会社パソコンの前で資料をまとめていたはずだ。それが、気がつけばここにいる。まさか、これって――異世界転生ってやつか?

「またかよ……」

オタクな友人が言っていたのを思い出す。転生する奴って、ほとんどがトラックに轢かれたり、過労死したりするんだと。でも俺はそんなのじゃない。単純に「寝落ち」しただけだ。まさか、それで転生って――

「おい、そこのお前!」

いきなり、聞き慣れない言葉で呼び止められた。振り向くと、そこには見たこともない服を着た男が立っている。背が高く、筋骨隆々だが、その顔には不機嫌そうな表情が浮かんでいる。

「……キモいな」

「え?」

「お前、なんだその服装? 見たことねぇぞ。キモい

「は? いや、これ普通スーツなんだけど……」

スーツ? なんだそれ。キモい名前だな」

俺は固まった。何だ、こいつは? よく見ると、周りの木々にも奇妙な模様が浮かんでいて、それが風に揺れるたびに奇怪な音を立てている。どうやら、ここは俺の知る世界じゃないらしい。

「待て、貴様……その顔、やっぱりキモいな」

「……顔?」

「そうだ。目が二つに鼻が一つ……普通すぎてキモい。お前、どこから来たんだ?」

なんだこの世界。さっきからキモい」ばかり言われている。俺の顔が普通すぎるって? そもそも異世界で「普通」って基準はなんなんだ?

「お前、何か役に立つ能力でもあるんだろうな? まさか、ただのキモいやつってわけじゃねぇだろ」

男は険しい表情で俺を見下ろす。そうか、異世界転生ってことは、何かチート能力があるに違いない! そう考えた俺は、恐る恐る両手を広げ、何か力を感じようとした――

しかし、何も起こらない。

「……能力? 俺、何も感じないけど?」

「はぁ? マジでただのキモいやつかよ。これだから異世界人は……」

「いや、待ってくれ! きっと、何か能力があるはずだ!」

必死自己弁護する俺だが、男は頭を抱えてため息をついた。

「ったく……。キモい奴が役に立たねぇとか、最悪だな」

こうして、俺は異世界に転生したものの、どうやらこの世界では何をしても「キモい」と言われるらしい。しかも、チート能力もない。

「お前、名前はなんだ?」

「俺の名前は……えーと、タカシだ」

タカシ? うわぁ、キモい名前だな」

「……もう慣れてきたよ、その言い方」

この世界で、俺はどうやって生き延びていくのだろうか……。

――異世界キモワールド』での、俺のサバイバルが今始まる!

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