十年以上経って、一度も会っていないくせに時々見るその人の夢。
進学先が違うからもう会わないかもしれない。好きだと伝えるか、いや出来るはずがない。
気恥ずかしい所の話じゃない。
あぁ、今日で終わりかぁ。と思っていたら、その人が隣に来た。
どん、と軽く体をぶつけて来たその人を見れば、こちらを見ている。周りに卒業式だと賑やかな他のクラスメイトもいる。
じっと見つめてくるが、その人はぶつかってきたあと、何も言わない。
好きな人がそばにいる事で、恥ずかしいやら、何か言うのかと思うが、何も言わない。
何?と問うても、曖昧な軽口以外口にしない。
私が何かを言わないと、察したその人は、そう、じゃあいい。と言って、笑いながら他のクラスメイトのところへ行こうとした。
もうこれきり。何もない。でもきっと、その人が私の近くに来たのは、何かの意味があったのでは。と、焦燥感に駆られその人に手を伸ばす。
しっかりと意識して触れた、その人の手を握れば、嫌がるそぶりはなく、好きだった笑いを含んだ目でこちらを見てくる。
他のクラスメイトもいるのに、こんな場所で言わせるのか、その人は待つように、こちらを見ている。
好きだ。好きだ好きだ。
告白なんてたいそうなものとも思えない、馬鹿な一つ覚えのように、単語のみを口にした。
突然の告白現場に遭遇したクラスメイトが、騒ぎ立てる中、その人は笑い、俺も好きだよ。と笑った。
進路が分かれているのに、それでもこれから続く、関係を繋げようと提案するその人──…
ってところで、滅茶苦茶な動悸と発汗で目が覚めた。