腕立て伏せ70回達成できる程度の筋肉はついてきたので胸板っぽいのは浮き上がらせられるようになった。
だけど大胸筋は上部だけしか鍛えられておらず、腕を水平にして気張る分には格好がつくが、腕を上に上げた途端にその下になにもないことが判明する。
鏡の前でショルダープレスをしてみるとそれがハッキリ露わになる。
腕が下にあるときはそこそこの形を保っていた胸筋は両腕を上げた途端肌に張り付くように消え去り、その下には無惨にも浮き上がった肋骨達が並ぶのである。
上腕二頭筋の上っ面だけを鍛えたガリガリのオッサンが、自分では細マッチョのつもりで調子に乗っていただけだったのだ……。
筋肉のアーマーをまとっていたつもりが、それは単なるビキニアーマーだった。
ビキニをひょいっと持ち上げればその下には骨と皮しかなかった。
よくよく見ると腹筋も腹直筋だけを必死に鍛えているだけで横はスカスカ、逃げ場を失った皮下脂肪がそこに集中したことでダルダルさに磨きがかかっている。
実に見事に「学校で教わる筋トレだけをひたすらやったような体」なのだ。
育ちやすい筋肉だけが育ち、そうでない筋肉は完全に蔑ろになっている。
柔軟性もなく見た目だけだから実用的な面での体力も出力も大したことはない。
強いて言うならカロリーはそれなりに燃やしてくれているだろうから肥満防止ぐらいにはなっているはずだ。
なんだか虚しいな。
鍛えやすい筋肉をひとまず鍛えようと聞きかじってまずは必死にそれを鍛えたが、結果としてはそれ以外の筋肉の貧弱さがより明確な身体が誕生したよ。
こっからどうしたらいんだろう。