人間の意識のどこかに、「最下層がいないと困る」という思いが潜んでいる。
米国でもインドでも、第二次世界大戦下のドイツでも、最下層のカースト集団こそが、社会を見舞う災難の責任を一手に引き受けるスケープゴートの役割を果たし、社会の構造上の問題から人の注意をそらす役割を果たしてきた。
そしてどのカーストに所属していても、多くの人は別のカーストより上にいることに誇りと安心を見出してしまうし、その階層の中での最下位にはなりたくないという思いから、ヒエラルキー内でも仲間を階層化し始めてしまう。
このようにカーストというものは、支配階層と隷属階層の間だけの話ではなく、あらゆる階層に所属する普通の人の心の中に形成され、維持し続けられているのだ。