帰路の途中、駅併設のぼちぼち繁盛している弁当屋に立ち寄った。この店では店舗に関して垂直に行列する事がルール化されており、私はルールに乗っ取り、垂直に伸びた列の最後尾に並んだ。
私が、スマホに視線注いでいた束の間に、若い女性が割り込む形で、店舗に対して並行に列を作り始めた。「やれやれ」と思いながらも、じきに店員が垂直に並ぶよう若い女性に注意を促すだろうと、一先ず判断を保留した。
程なくして妙齢の女性がやってきて、私と若い女性をとみこうみしながら、若い女性の後ろに並行にならんだ。この時点で嫌な予感がした。
すると案の定、店員が若い女性を優先して案内し始めたので、思わず女性に対して「さきに並ばれてましたか?」と声をかけてしまった。真顔だったと思う。
女性はかなりたじろいだ様子で「さっ先にどうぞ......」と消え入るようにつぶやいた。店員は剣呑な雰囲気を察したものの、件の状況は把握しておらず、むしろ私に対し、列に割り込む威圧的な客と認知したかのような視線を向けた。
その店員のオペレーションミスと態度にさらに苛立ち、「この店舗は垂直に列を作るんじゃないのでしょうか」と敢えて尋ねた。店員の回答は「分かりにくくて、すみません。垂直に列を作るんですよ。」というおうむ返しだったが、態度は憮然としていた。
内心、「垂直に列を作るのが店舗ルールなら、なぜ並行に割り込みした女性を優先するんだよ......」という理不尽さを覚えたものの、それ以上、抗弁するのも不毛に関じ、弁当を受け取り、すごすごと引き下がった。
駅から家までの帰り道、若い女性の心底怖がっていた表情が脳裡によぎり、自分があたかも理不尽な蛮族になってしまったかのような気持ちになり、罪悪感に駆られた。一方で店員のオペレーションミスが無ければ、このような事態は起こり得なかったのに、という思いもあった。
帰宅してから、ひどくクラい気持ちで弁当をかきこんだが、ろくに味がしなかった。きっと、割り込みを見過ごしていた方が、体験としては遥かにベターだった気さえして、どんどん気持ちがひもじくなっていった。クソっ...... どうしたら良かったのよ......