身分犯
みぶんはん
犯罪が成立するために、行為者の一定の地位または状態を必要とする犯罪をいう。「身分」の意義につき、判例は、「男女の性別、内外国人の別、親族の関係、公務員たるの資格のような関係のみに限らず、総(すべ)て一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位または状態を指称する」と解している。公務員や法律によって公務員とみなされる者(「みなし公務員」という)がとくに重要である(刑法197条以下の収賄罪、同法193条の公務員職権濫用罪など)。この身分犯には、秘密漏示罪(刑法134条)、偽証罪(同法169条)、保護責任者遺棄罪(同法218条)、横領罪(同法252条)などのほか、たとえば、常習犯(同法186条1項の常習賭博(とばく)罪など)における犯人の常習性や、目的犯(同法225条の略取誘拐罪など)における目的なども身分犯の対象となりうる。身分犯には真正身分犯と不真正身分犯の区別があり、前者は行為者が一定の身分を有することによって初めて犯罪を構成する場合であり、後者は身分の有無により法定刑が加重または減軽されるにすぎない場合である。収賄罪(刑法197条)は前者の例であり、業務上横領罪(同法253条)は後者の例である。
[名和鐵郎]