2021-11-20

はじめてのおつかいのしっぱい

はじめてのおつかいは、小学校1年生くらい。

冬休み寒い日。近所の駄菓子屋さんに兄妹3人分のアイスを買いに行った。バニラソフトクリーム

田舎のまっすぐな道。アイスが溶けない距離。失敗しようがないコース

3人分ケースから選んで、小銭をお店のおばあちゃんに渡して、ここまでは完璧。あとは帰るだけ。

そこに難敵が現れた。駄菓子屋の、放し飼いにされている犬、ユキだ。

その日のユキはアイスを狙っていた。後をついてきて、袋にまとわりつく無視しても前に立ちふさがる。なんだか怖い……。

この状況を打開する作戦として思いついたのが、アイスひとつ犠牲にして、あげてしまうこと。ユキが食べている間に逃げ切ろう。

フタを外し、ユキにソフトクリームをあげる。予想したとおりベロベロ舐めている。今のうちだ。そーっと歩き距離をとる。

ところがである。ユキはひとつを食べ終わる前に、走ってきて、また前方でハァハァしてきたのだ、え、食べ終わってないのに。ずるいよ。

ここで思いついたのが、アイスをもうひとつ犠牲にすること……。これで最後だよ? パトラッシュ

とにかく時間を稼いで、帰路を急ぐ。

と、ところがである。二度あることは三度ある。ユキはまたしても、前をふさぎ、最後ひとつをほしがるのだった。

パニックである。もうしょうがないのである最後ひとつをあげるしか手段は残されていない。

そのあとの記憶あいまいだ。とにかく泣きながら逃げて、顔をぐしゃぐしゃにして、おとうさんとおかあさんに一部始終を話したような気がする。

こうして、はじめてのおつかいはしっぱいに終わった。駄菓子屋さんの飼い犬に300円分を回収されるという、苦い思い出だけが残った。

たまに帰省すると田舎景色はまったく変わっていない。でも人は減って、空き家か増えた。駄菓子屋さんはもうないし、ユキはもういない。

寒い季節になると思い出す記憶。みんなもしっぱいしてるよね?

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