というのも、自分がまだ子供いなかった時期に何人もの子持ちから子供と子育ての話をきかされたが、それを全然面白くないなと思って聞き流していたからだ。
ところが、バイト仲間のAさんというまだ二十代半ばの男の子に、雑談の流れの中でちょっと子供の話をしたら凄く面白がられたので、ものは話しようなのかなと思った。どんな風に話しても、子供の話なんかつまんないんじゃなかったのか?
私がAさんにどんな話をしたのかというと、「新生児は寝てくれないから、母親も二十四時間体制で世話をしなきゃならんので寝られない」という話だった。
したらAさんが、
「二十四時間って、そんなに寝ないで赤ちゃんも母親もどうして生きれるんですか!?」
という。まさかそこ食いついて来られると思わなかったのでびっくりしたが、
「いやまあ赤ちゃんも母親も人間なのでガチでずっと寝れなかったら生きられんのよ。でも、赤ちゃんは、奴らは二十四時間絶え間なく世話がやける癖に、ほんの僅かの間に寝落ち熟睡するのを小刻みに繰り返しているから、死なない。一方母親の方はそんな器用なことは出来ないので、たまに死ぬ人もいる」
と答えたら、赤ちゃんは寝ないけど寝るというのが、Aさんには今までの人生で初めて聞いた情報だったらしく、なにそれすげえ! 赤ちゃんって面白い!!! と興奮していた。
まあAさんはだいぶ変り者というか、度を超た生き物好きで、赤ちゃんを人というよりは珍獣のように思っていて、私のした話も珍獣の珍エピソードだと思って聴いて喜んでいたのではないかと思う。同じ話を他の子供のいない人に話しても「子持ちの子供自慢・苦労したアテクシエピソードくそつまらねえ」としか思われなかったかもしれない。
でもまあ私の若い頃をふりかえってみれば、子持ちの話す子供の話なんて、「うちの子かわいい」「子育ては大変」「お前も早く子供産め」の三種しかなかったのであり、赤ちゃんの生態なんか聞いたことがないな。
話をレシーブしてくれた(救いとってくれた)Aさんとキャッキャウフフする流れじゃねーのかよ?!