なんとか座席を確保し、ほっと一息ついていると大きな揺れが。
そのはずみで前に立っていたおじさんが抱えていたカバンの角が顔面にクリーンヒット。
不意打ちのあまりの衝撃に声も出ない。
なんとか相手の顔を見てようやく痛みが追いついてきて、思わず声を上げた。
「イッターい!全然大丈夫じゃないですよ!」
その時のオッサンの目といい、顔つきといい、今思い出しても背筋が凍る。
ぶつけたことをなんとも思っていない、こちらを見下したようなうんざりした目。
おざなりにもう一度、「すみませんでした」と気持ちのこもっていない言い方で謝罪。
一歩間違えば失明だぞ。信じられない。
「カバンがあたったのは申し訳ありませんが、僕それほど怒られることをしました?」
「僕それほど怒られることをしました?あ?」
こいつは関わったらいけないサイコパスだ。
そう直感的に思って、黙ったまま下を向いてもう目を合わせないようにした。
ふつうのくたびれたリーマンに見えるのに、相手が女で自分より弱そうというだけで傷害の上に逆ギレして噛み付くんだと思うと恐怖を感じた。
そんなことを考えながら下を向いて自分の手を見つめていた。
タックルおじさん
いるいる
いるいる