東京に出てきて15年以上経った。ずっと同じ所に住んでいる。
それなのに、ついこの間近所に老夫婦が営む八百屋があることを知る。
休みの日に何か料理を作ろうとその八百屋へ行くと、店頭の一番目立つ場所に葉っぱ付きの大根が沢山置いてあった。
小学校6年生の夏休み。いつものように母親の田舎へ帰って時のこと。
2つ上のMちゃんといつものように川遊びをして、野山を駆けるはずが、その年は違った。
Mちゃんはとても静かで、それでいて何かこちらの心を動かすような空気を出していた。
結果からいえば、僕はその夏休みにMちゃんとキスをした。そして同年代よりも早く彼女ができた。
といっても遠距離だし、多感な年頃なので、お互いどこか本気ではなかったと思う。
この関係は向こうが大学1年生。僕は高校2年生になるまで続いた。
特別思い入れがあったわけではなく、なんとなく波長が合った。ただそれだけ。
高校2年生の夏。先に上京していたMちゃんに会いに行ったが、「好きな人が出来た」と代々木公園で告げられた。
僕は少し安心した。付き合う様になってから、ずっと息苦しかった。
相手はMちゃんと地元が一緒で、僕も知っていた大根畑の農家の息子だった。
買ってきた大根の葉っぱを皿に入れ、しばらくすると黄色い花が咲いた。