専門学校のHALとモード学園のCMはたいていセットで放送される。
僕は毎年見比べながらその都度疑問を感じていた。
「映像分野が絡んでるHALよりファッション関係のモード学園のほうが、CMが格好良くないか?」と。
考えればなんとなくわかりそうな気はする。
「ほら君も頑張ればこのレベルに行けるよ」と、若人から等身大の憧れを引き出してHALに誘いこもうとしている。
一方モード学園はとにかくお洒落でキメキメで攻めた映像を使い、独特な美意識と孤高のプライドを併せ持った未来のコシノジュンコを取り込もうとしている。
さしずめそんなところだろう。
多分世間はHALとモード学園のCMの差異をこんな風に納得して受け入れている。
僕がいちいちそれに引っかかってしまうのは、僕が美術大学で映像分野を専攻していたからに違いない。
手に職をという気分にはなれず、根拠もなく自分は大学生にならなければと思い、モード学園のCMの様なスタイリッシュさに憧れた、そんな糞田舎の高校生には不釣合いな憧れと孤高のプライドを併せ持ったしょうもない餓鬼だった。
僕は18歳から19歳に変わる年の春に入学し、そこにしがみつき、3年生になる直前に退学した。
以来人を避けるように引きこもったり警備の仕事をしたり。