バイト先の男の人に、走り方が変だと言われた。その人は少し年上だけど、入った時期が一緒だったのでわりと仲良くしてた。明るくて話しやすい人だった。
ある日、「この前、道で走ってるのを見たよ。走り方がすっげー変だった。こんな奴いるんだ?と思って超笑った」と言われた。
バスに乗り遅れそうになって走ってるところを見られたらしい。
「別に変じゃないですよ」
「変だったよ」
「変じゃないですよー」
みたいな会話になった。それだけならどうってことなかったけど、その日以来、そいつが私の走り方をディスってくるようになった。
私がバイトに行くと、「お、走り方が変な奴が来たー」
他の人に対して「コイツ、走り方が変なんですよー」
「あの変な走り方、またやってみせてよー」
見下すようにニヤニヤしてた。
バイト先は室内だったのでバイトで走ることはなかったけど、別の日にまた外で見られて「やっぱり変だった」と言われた。ムカついた。
いつも「変じゃないです」と返してたけど、何度も言われてどんどん嫌気がさしてきた。
そんなに変なのかと心配になって、友達に走り方を見てもらったところ、別に何も変じゃなくて普通だと言われた。
「その人、もしかして◯◯ちゃん(私)のことが好きなんじゃ?」と言われて、絶対に100パーそれはないと思った。
そいつに「本当に本当に本当に嫌なんでやめてください。しつこいですよ」と言ったら、「だって本当に変だったしさー」とバカにしたようにニヤニヤしてた。
それから、そいつに走り方のことを言われてもスルーするようになった。言われる回数が減ったけど、それでもまだたまに言われてた。バイト先で顔を見るのが苦痛になった。
そんな状態で数ヶ月たったある日、バイト帰りにそいつに待ち伏せされた。いつもはニヤニヤしてるのにすごく暗い顔だった。そしてプレゼントを渡されそうになった。誕生日でもクリスマスでもなかったけど。
「これあげる!」
「え、なんで?いらないよ」
「あげる」「いらない」「あげる」「いらない」「あげる」「いらない」という変なラリーをして、そいつが泣きそうになって、プレゼントは諦めたらしくぼそぼそと何か話しだした。
「何言ってるかわかんないんだけど」と言ったら、「ちょっと待ってて」と言って、近くの自販機まで走って行って缶コーヒーを一本だけ買って戻ってきた。
そいつはそのコーヒーを飲みながら「実はずっと好きでした。付き合ってください」というような話を震えながら泣きそうになりながらコーヒーは飲みながら言ってきた。
私からすれば、走り方の件で大嫌いになってた人だったので、迷わずすぐに断った。走って帰ろうとしたけれど、そいつが後ろ姿を見ている気がして走らずに帰った。
驚きと途惑いとムカつきと、もやもやしたよくわからない気持ちだった。
後日、お互いに何もありませんでしたという態度でバイトで顔を合わせ、走り方について言われることはなくなり、半年くらい後に私はバイトを辞めた。
変な走り方のキミだけどボクが守ってあげる、みたいなヘンな思い込みをされたのかな?