ちょっとしたことですぐに視野が狭くなって頭に血がのぼり、ウウウゥと唸り声が出て、
何かに嚙みついたり、手足をジタバタさせたくなるという難儀な性質が一向に治らないまま人生も三十年に差し掛かろうとしている。
昔からこの異常性をなくそう治そう抑えつけようと決意しては失敗して徒労を重ね続けてきたのだけれど、
近年、発達障害と診断を受けるなどするうちに、なくそうとするより自分にはそういう性質があることを受け入れた上で、
うまく制御してなるべく見せない方向に舵を切った方が手っ取り早いし現実的だと考えられるようになった。
そんなわけでここ数年は、ヤバいと気付いた時点で 「ま、些事よ些事」 と思ったり口に出したりするようにしているのだが、
これがまた面白いようにハマって、人生がだいぶ楽になって発作の回数も激減する、自分にとって魔法の言葉になった。
実際のところ、一瞬前まで「だめだ、もうおしまいだ。このままではこの世の終わりだ、俺はここで死ぬしかないのか?嫌だまだ死にたくない!アアアアアアアア」
と本気で思って唸り声をあげるのを必死で堪えながら頭を抱えていたことが、よーく考えたら「イメージした通りのサイズの玉ねぎが売ってない」とかそんな程度の事だったりする。
もちろん玉ねぎは他のサイズのもので代替が効くし、俺はシェフではないので素材のクオリティを追求する必要もない。まさに些事。
というか、自分の生活の中の引っ掛かりポイントなんか、決まった場所にあるはずのリモコンが見つからないとか、Tシャツがうまく着られないとか、その程度の事案が大半だ。
年齢を重ねるにつれてむしろより具体的で正確にイメージができるようになってイメージと現実のギャップで振り回されることが増えたり、
単純に自制の能力が弱まってきているような実感もあったので、致命的にどうにもならなくなる前に回避策を見つけられてよかったと思う。