子供の頃はなんとも思わなかったが、他の大人と接するに連れて、だんだんうちの母の日本語力が低いと思うようになった。
小さい頃から母と話が通じなくて、自分なりに話が通じない原因を考えて指摘したりもしたのだが、母は一貫して自分の非を認めなかった。
例えば私が、話が通じなかったのは母の言葉が足りなかったからで、ここでちゃんとこの言葉を入れておけば分かりやすかったはずだ、などというと、「書き言葉と話し言葉は違うのよ」などと、まるで私が口語でのコミュニケーションに問題を抱えているかのようにいうのだった。小さい頃は自分が悪いと思っていた。
実家を離れて、家族とメールでコミュニケーションをとることが多くなると、メールというはっきりと残る形で、母の日本語の拙さが顕れた。
祖母はもうすぐ90歳になるのに、メールの文章はいつもはっきりしている。句読点は正しいし、助詞の使い方も正しい。祖母は英語ができないのに、英語で書かれた私に関する書類から、固有名詞、数字、日付などを読み取って、スペルミスはあれど「ここにこのように書かれていますので、どうなったかなと」などと言って引用してくれる。