いつもと別のゆとりの話。
「ほんじゃ、労働基準局でもなんでもたれこんでもらってくださいな」と
上司がキレたところ、ゆとりが会社を去ったかわりに労基がやってきた。
しばらくの間はみんなで彼の功績を讃えていた。
そのゆとりが6月頃になって「あらためて増田さんのところで働きたい」
とお願いをしてきた。もちろん父親を通じて。
「いや、社風があうところで活躍したほうがええよ、うちでは才能を活かせきれない」と言っても
「ほんじゃ、がんばりを目に見える形で持ってきてよ、
無理でしょ?そういうことだから」と断った。
「がんばりを見せに来ましたよ」と突然奴がやってきた。
父親ではなく、何故か同時期にやめた別のゆとりと連れ立って2人で。
「見てもらうまで帰りません」と叫び始めた。
「大声出すなよ」
「何を見せてくれるの?」と聞くと。
「これを見てくださいっ!」
そういうと、奴はドキュメントケースの中から小さいキャンバスを取り出した。
「は?何これ?」
『彼の熱意を受け取ってください!』
「意味わかんないんだけど、何?」
「自画像です。がんばって描きました。」
ゆとりは泣きながら繰り返した。
ちょっと悩んで、「自画像が全く似ていない」という理由でお帰りいただいた。
ふと気がつくと私も泣いていた。